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[ liberal arts-大学生の常識 ]

教育「無償化」ひとり歩き
(教育政策データで読む)

教育「無償化」ひとり歩き(教育政策データで読む)

 政府が授業料などの教育にかかる経費をタダにする教育無償化に向けた具体策の検討に入った。財源として年金などの保険料に上乗せして徴収する「こども保険」制度を設ける案などが挙がっている。経済財政運営の基本方針(骨太の方針)も人材投資が柱となる。経済政策として、教育をどう位置づければいいのか。さまざまなデータから考える。

幼児教育・保育をタダにするのにかかる費用は約1.2兆円、大学までだと4兆~5兆円

 5兆円は消費税収2%分に相当する。無償化の最大の壁は財源だ。カバーする範囲があいまいなまま、ひとり歩きしている。自民党の小泉進次郎氏は「こども保険」で1.7兆円の財源をひねり出せるとしている。

幼児教育・保育から議論が進む(都内の保育所)

 企業と働く人から保険料を集め、就学前の子ども1人あたり、月2万5千円配る構想だ。すでにある保育関連の補助金に2万5千円を加えれば、幼児教育・保育を無償化できるという計算だ。

 すべての児童に2万5千円配るには、労働者と企業の社会保険料を0.5%ずつ上げる必要がある。年収400万円の世帯で月1200円、年収800万円で月2500円の追加負担が生じる。自営業者などの国民年金加入者は月830円の負担増だ。一度に上げると反発も大きいとみて、まず0.1%ずつ上げるところから始める考えだ。

国民年金の未納率は4割に達する

 こども保険の課題は負担に偏りがあることだ。国民年金の未納問題は深刻で会社員に負担がかかる。高齢者や専業主婦も負担しないため、「社会全体で支える仕組みになっていない」(経団連)。もっとも高齢化で給付費が膨らみ、公助(税金)と共助(保険)の関係があいまいなのは、日本の社会保障制度にもあてはまる課題だ。

四年制大学への進学率は両親の年収1000万円超なら62%、400万円以下なら31%

 大学教育まで無償化すべきだという主張の背景にあるのは、収入による教育格差だ。大卒の生涯賃金は高卒より6千万~7千万円高いというデータがある。両親の所得が子どもの学歴に影響するなら、格差が固定化しかねない。経済同友会は3月に出した報告書で「貧困の世代間連鎖が生じる」と警鐘を鳴らした。

 国立教育政策研究所は大学や大学院に国が投じるお金に対し、卒業者は2.4倍の財政的な貢献をもたらすと指摘する。大学を卒業することで年収が高まることが期待でき、所得税や住民税の増加が見込めるという。

 ただ財務省は大学無償化について「自己投資の性格が強い」と否定的だ。自民党は在学中の授業料を免除し、就職後の所得に応じて出世払いする方式も提案している。

 経済同友会の小林喜光代表幹事は「日本人は消費税に抵抗がある。保険料で取ると気づかないところがある」と漏らす。教育政策を「社会の支え合い」と位置づけるなら税で負担するのが筋だが、批判を受けやすい増税の議論に真正面から向き合えないところに無償化議論の難しさがある。

[日経電子版2017年6月18日付]

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