日本経済新聞 関連サイト

OK
[ career-働き方 ]

「社長も英語が不得手だったが」
SAPの新卒採用

「社長も英語が不得手だったが」SAPの新卒採用

 「フォーブス・グローバル2000」企業の約9割が導入する、欧州ソフトウエア最大手の独SAP。日本法人は24年にわたり、継続的に新卒を採用してきた。社長の福田譲氏も、外資系大手にはめずらしい生え抜きだ。3年ほど前から、新卒の採用・育成方法を変更したという。SAPジャパンのアキレス美知子常務執行役員・人事本部長に聞いた。

日本企業に飽き足らない若手を

 ――18年卒の採用予定人数を教えてください。

 「年によって違いますが、20人前後採用しています。17年は20人入社する予定です。人数は目標にせず、企業文化や求める資質に合っている人がどれだけ残るかで決めています。職種は営業とコンサルタントというSAPの製品を顧客に導入する際のプロフェッショナルの2つです。海外の大学を卒業して入社する人もいますし、原則は通年採用です」

 ――SAPが求める人物像は。

 「SAPが大切にしている『ハウ・ウィ・ラン(どのように過ごすか)』という価値観があります。『率直に話す』『約束を守る』『好奇心を持ち続ける』『違いを受け入れる』『周りの懸け橋になる』この5つです。これに沿って、その人のプロとしての価値観と、当社の価値観がどこまで一致するかを見ています」

 「『周りの懸け橋になる』という概念は、SAPが大事にしているものの一つです。大きな組織になると縦割りになりがちですが、自分の範囲の仕事ではなくとも一歩踏み出して周りを巻きこめる人を評価しています」

 「我々は20代の若手社員を『アーリータレント』と呼んでいます。日本の会社では一般的に、仕事を任せられるまでに時間がかかります。入社はしたものの、そのスピード感に飽き足らない人もいる。当社は、そういった自分の力でキャリアをつくっていきたい、意欲の高い人を求めています」

 ――面接ではどんな質問をするのですか。

 「『コンピテンシー・ベースト・インタビュー』という手法を使っています。過去の経験を質問し、そのときにどう対応したかを聞くと、その人が将来どのように働いていくのか、ある程度予測できます。具体的には、学生時代にどんなことがあったか、そのときどうしたのか、などを聞きます。たとえば、学生時代の経験から、その人のリーダーシップの発揮の仕方が分かり、リーダーとしての将来の素養が見えてきます」

英語漬け「ブートキャンプ」で選考

 ――近年、採用手法で変えたことはありますか。

SAPジャパン本社の入るビル

 「3年ほど前から、書類審査と1次面接を通過した営業職志望の学生を対象に『ブートキャンプ』(新兵訓練)という選考を始めました。これは『あなたが実際にSAPの営業担当になったら顧客にどんな提案をするか』というシミュレーションを7~8人の班に分かれて一日中議論し、プレゼンテーションを完成させる選考です。提案に向け、それぞれがチームにどう貢献しようとするかなどをチェックします」

 「18年卒は、7月から8月にかけて実施し、60~70人ほどが参加する予定です。選考には、社長や役員も参加します。ブートキャンプは英語で行います。ですから、ある程度の英語力を持っていた方が有利です。しかし、なかには英語がつたなくても、議論のなかで自分なりにコミュニケーションをとっていく人もいます」

 ――英語をからめた選考を取り入れた理由は何ですか。

SAPジャパンのアキレス美知子常務執行役員・人事本部長

 「入社後の育成を視野に入れているからです。3年前から世界各国の入社2年から5年目の若手を集める『SAPセールスアカデミー』というグローバル営業系の研修を始めました。米国での約6週間の共同生活を含む約9カ月の研修などのプログラムがあります。共同生活は2人部屋で、バックグラウンドの違う人と組ませます。世界から人が集まるので、様々な英語を話す人がいます。そこで英語が全く分からないと、かなり厳しくなってしまいます。英語漬けのブートキャンプには、それに備える意味もあるのです」

 「福田(譲SAPジャパン社長)も、入社当時、英語がまったく話せなかったとよく言っています。今英語が不得手でも、入社してから伸びる人もいます。彼らのために、eラーニングやクラスでの英語研修も用意し、準備ができてからSAPセールスアカデミーに挑戦できる仕組みも検討しています」

異動への応募、上司の許可は不要

 ――若手にとってのSAPの魅力を教えてください。

 「SAPは決して甘い会社ではありません。しかし、チャレンジする人には非常に向いている企業です。多くの機会を用意しています。1つの例が『ジョブポスティング制度』です。社内でも1500から1800くらいの仕事の枠が常に公開されていて、上司の許可なく応募できます。日本にいてもドイツの仕事を志願することができます。キャリアの広がり方が非常に多彩なのが魅力だと思います」
(松本千恵)[日経電子版2017年6月28日付]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>