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[ career-働き方 ]

歌う看護師(8)デビューして変わった私の価値観

瀬川あやか authored by 瀬川あやか看護師、シンガーソングライター
歌う看護師(8) デビューして変わった私の価値観

 どうも、歌う看護師の瀬川あやかです。3枚目のシングルをリリースさせていただき、全国各地へお邪魔する機会がまた増えました。デビューしてからいろいろなお仕事をさせていただいておりますが、中でも"ライブ"はやはり私にとって一番大事なものだなあと最近改めて感じています。CDの予約会やリリースイベント等で普段なかなか会いに行けない地域にお邪魔し、応援してくださっている皆さまと直接触れ合う時間はとても貴重なもので、目を見ながら言葉や気持ちを交換することで、よりいっそうの温かみを感じる気がするのです。

ファンからの手紙に感動

 よくファンの方からお手紙をいただくのですが、先日いただいたお手紙の中にこんな文章を見つけました。

 「せがあやちゃんのライブに行くまで曲を何度も何度も聴いて、どこで何をしたら盛り上がるかなって考えてました。何を着ていこうか、ネイルはどんなのにしようかとかライブに行くまでいっぱいいっぱいせがあやちゃんのことを考えています」

「ライブは一番大事なもの」と話す瀬川さん

 ただただ純粋に感動しました。私がみんなに会うまでにたくさん考えて準備していくのは当たり前だと思っていて、もちろんいやいやに考えたことはないけれど、パフォーマンスのクオリティやどうやったらみんなが楽しんでくれるかと趣向を凝らすのはアーティストとして重要なスキルの一つだと思っています。

 しかしこのお手紙を読んだとき、みんなも同じ気持ちで、むしろ私のほうが圧倒されてしまいそうになるくらい愛情深く、その瞬間を全力で楽しむ準備をしてきてくださっているのだと思うことができました。「私を信じて着いてきてほしい」とライブMCで言っているくせに、どこか「いつかみんな消えてしまうかもしれない」と、応援してくださっている皆さんを信じきれていなかったのは私のほうだったのかもしれません。あ、皆さんのせいじゃないですよ! 皆さんからいただくそんな一つひとつの幸せが瀬川あやかの力の源になっていることが伝わればいいなと思います。

ライブ中の瀬川さん

"思い出"にどれだけの労力をかけられるか

 この流れで後半は「時間とお金の使い方」についてのお話をしてきたいと思います。「お金」という表現ではなんだかいやらしい感じがしなくもないですが、最近自分の価値観に変化が生まれ、新境地に至ったような心地がして新鮮だったので少しお付き合いいただければと思います。

 前述したようにライブとは私だけで作っていくものではなく、そこにたまたま居合わせたみんなと一緒になって作っていくものだと思っています。言わば、DVDや音源等を覗けば形には残らない"思い出"です。それまでには演出やセットリストを考えたり、歌や演奏のスキルアップのため練習をしたりと何かしらの労力を費やします(労力って自分で言うと何だか偉そう。すみません)。また、足を運んでくださる皆さまもチケットを買うためにコツコツとお小遣いをためたり、バイトをしたり、スケジュールを調整したりと多方面に時間と気持ちを費やしてくださっているのですよね。

「一つでも多く皆さんと素敵な“思い出”を作っていきたい」

 自分がこの「歌う看護師」というお仕事をさせていただくようになってから感じた変化とは「"思い出"にどれだけの労力をかけられるか」を考えるようになったということです。今までは大好きなお洋服のためにお金を使いたいと思っていた場面も、そのお金を使って行ったことのない場所に行って見たことのないものを見たいと思い、時間を使うなら何か新しいことに挑戦し経験するためのものとしたいと思うようになりました。

 それは皆さんからいただいた幸せの中で感じたことが大きく影響しています。スケールを大きくすれば、人が死んでしまったときに残るのはそういう"思い出"で、物として実在する形見でさえもその"思い出"が深い意味を与えています。

「3枚目のシングルリリースで、全国各地へお邪魔する機会が増えました」

 私は出会ってくださった皆さまに何を残すことができるのでしょうか。一瞬でも交わった時間にどんな意味を持たせることができるでしょうか。もちろん堅いことばかり考えていられないので「ただ楽しい、とにかく幸せ」と漠然と感じることも大切です。むしろこの連載以外では柔らかいことしか考えていないかもしれません(笑)。

 表現者として、評価されるものとして、信じてくださっている皆さんの期待をいい意味で裏切っていきたいです。そして私は身体と心でもっといろいろな経験をして、一つでも多く皆さんと素敵な"思い出"を作っていきたいな。読者の皆さんには学生の方も多くいらっしゃると思います。過ぎてしまった時間を巻き戻すことはできないし、思い出や経験はお金では買えません。私自身もまだまだ未熟ではありますが、ともに身を尽くし心を焦がして毎日をより彩り豊かなものにしてくださいね。四半世紀しか生きていないペーペーの私も、私なりに毎日を工夫して生きていこう。