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19卒学生は要注意!「売り手市場」今と昔で何が違うのか

ホンネの就活ツッコミ論(44)

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今回のテーマは「売り手市場の意味」です。2014年卒ごろから売り手市場に転じ、現・3年生(2019年卒)も引き続き、売り手市場と言われています。学生からすれば「売り手市場」とは学生側が有利で就職しやすい、ととらえがちです。では、それは本当なのでしょうか? 過去の売り手市場と比較すると、実は学生有利と一概には言い難い事情が隠されていました。

今でもインパクトの大きいバブル期の売り手市場

ここ最近、学生に話を聞くと、就活を結構、甘く見ている話がボロボロ出てきます。

「大企業に行きたいのですが、実は適性検査、それも数学が苦手で。でも、人間性を見てくれるだろうから、数学の勉強はやめました」

「就活は2月になってから始めようと思います。サークルの先輩も、ゆっくり始めて、それで大企業に内定が取れたので」

「就活対策? 特に何もしなくても、今は学生が有利だから大丈夫ですよね?」

そのたびに、「それはちょっと...」と話すのですが、どこまで響いているかどうか。

一方、首都圏・関西圏を中心に、動き出しの早い学生は例年以上に早く動いています。そのため、内定を取れる学生・そうでない学生の差が大きくなると見られています。就活を甘く見ている学生に話を聞くと、売り手市場、それもバブル期と同じ状態であることを想定している話が出てきました。

過去30年間を振り返ると、売り手市場だったのは、1980年代後半~1991年、2006年~2008年、2014年~現在の3期。一方、就職氷河期だったのは、1990年代後半~2005年、2009年~2012年ごろの2期。特に今でもインパクトが大きいのが1980年代後半から1991年ごろにかけてのバブル期です。当時は採用基準を大きく下げてまで内定を出し、しかも内定者拘束という手法で学生の囲い込みをしていました。

当時、刊行されていたリクルートの就職情報雑誌『就職ジャーナル』では1988年から1991年まで4年連続で内定者拘束のエピソードがコラムで紹介されています(書き手は夏目房之介さん)。

1988年記事(1988年12月号「就職戦線総決算88」)では、内定拘束のベスト・ワースト3を発表。ベストは「1位:海外旅行(香港1カ月、オーストラリア1カ月・ただし船旅3週間)「2位:国内旅行」「3位:料理」。料理の項目では、人事担当者が寿司を食べている学生に対して「このあとはアスレチック・ジムなり、映画、ディズニーランド、希望次第で何でもやってください」と話しかけています。1カ月海外旅行するのはいいとしてもそのうち3週間は船旅にする、というあたり、学生を絶対に逃がさない、という企業側の強い意志が出ています。

ワーストは「1位:スーツ(朝一番で呼び出し、会議室に通すとスーツを預かりそのまま。昼食時にはビールを飲ます)」「2位:スッポン(学生の生活に行員がべったり張り付く)」「3位:新幹線(博多まで行って帰ってくるだけ)」「次点:ジグソーパズル(一日中やらせる)」。今だと、どう考えても炎上するか、学生が途中で放り投げそうな気がしてなりません。

1989年記事では、旅行代理店が企業向けに内定者拘束旅行プランを売り込み盛況だったことや、内定者にトヨタクレスタ級の車(300万円相当)をプレゼントする大阪の中小企業も紹介しています。

バブル期間中の1990年に刊行された人事担当者向けマニュアル本『採用内定者管理の進め方』(知念実、ぱる出版)では、内定者拘束についての章もあります。プレゼント攻勢では、学費援助、マンション、背広のほか、牛・馬というローカル色あふれるプレゼントまで登場。

長期間、内定者を拘束する方法の項目では、「海上フォロー」なる言葉が出ていました。要するに船旅のことで、なるほど、『就職ジャーナル』にも登場するわけです。「山間僻地の保養所等に連れていってフォローする」という項目では外部への連絡を一切させないことが目的として、「(保養所内の)公衆電話はすべて『故障中』の貼紙をべたべた貼ってあきらめてもらった」その程度であきらめたのでしょうか、本当?

バスツアーの項目では「内定者を極力バスに乗車させたまま、しかものろのろとしたスピードで、あてもなく連れ出す方法に特徴がある」としています。ああ、鬱陶しい。「フォロー効果をあげる」(微妙に用語の使い方を間違えていますが、要するに内定者が逃げないようにする、くらいの意味)ためにどうするかと言えば、「美人のコンパニオンを同乗させて、車内での接客サービスに気配りを示そう。飲みものも単にビールだけでなく、世界の名酒を積み込んで、味わってもらう」のが、いいそうで。シャンパンとか、森伊蔵とか、久保田の万寿あたり飲ませてくれたのでしょう。海外旅行の項目もありますし、リゾートホテルの項目では「現地では小遣いを毎日渡すようにする」とまで。

なぜ、バブル期の売り手市場は現代と何が違ったか

バブル期は景気が良かった、人不足で企業が新卒採用を拡大していた、という事情に加えて大学教育とインターネット、という伏線もありました。まず、前者の大学教育ですが、当時は各学部ともすぐ専門教育に入るのではなく、教養課程というものを履修していました。経済界から専門性のある人材が育たない、として批判が出て廃止されるのは1991年です(東京大学だけでは存続)。

現在はもちろんのこと、1980年代でも(あるいは他の年代でも)、学生批判というものは存在しました。いわゆる「いまどきの学生は遊んでいてどうしようもない」というものです。ですが、1980年代と現代とで比較した場合、大学に教養課程がある分だけ、1980年代の学生の方が広く勉強していた、と言えるでしょう。

それから、学生の数が現代に比べて少なく、まだ希少価値があった、とも言えます。そして、もう1点、インターネット事情もあります。日本の学生がパソコンを利用するのが普遍的になっていくのは1990年代半ば以降。1980年代は特に普及していません。そのため、学生が就職でもそれ以外でも情報を得るとしたら新聞・雑誌メディアに頼るしかありませんでした。活字を読む絶対量が現代の学生とは大きく異なります。

企業側は学生の希少価値を認め、「とりあえず入社さえさせればいいだろう」と安易に考えていた、それがバブル期とも言えるのです。

バブル期の反省から現代は抑制気味

その後、バブル期の大量採用があまりにも安易だったため、企業が求めるパフォーマンスを発揮できない人材が出てしまいました。バブル期に学生だった社会人すべてが劣る、ということではありません。そもそも大量採用をした責任は本来、企業側にもあるはずです。しかし、パフォーマンスという点で劣る人材が多いのは事実、ということで「バブル世代」と言えば、ネガティブな意味で使われることが多くなってしまいました。

さて、大量採用をしたバブル期の反省が、現在の売り手市場をバブル期の意味合いから大きく変えています。バブル期と同じく、各企業とも人不足であり、採用意欲が活発である点は変わりません。しかし、だからと言って、バブル期のように、採用基準を下げてまで大量に採用したらどうなるでしょうか。また、過去の失敗を繰り返すだけです。

さらに、大学では教養課程がなく(一部の大学・学部では教養教育を復活させてはいます)、インターネットや携帯電話が普及した結果、学生の教養の広さ、という点ではバブル期ほど信頼がおけません。学生の数もバブル期に比べて大幅に増加。そのため、バブル期ほど希少価値があるわけではありません。

こうした背景もあり、企業側は採用基準を極端に下げないようになりました。具体的には、もし、採用基準が到達する学生が採用期間中に出ない場合、改めて募集を掛ける手法が主流になりつつあります。

「お悩み解決!就活探偵団2018 ホントに売り手市場? 就活の理想と現実」では、売り手市場ながら企業が採用基準を上げているエピソードが出ています。

伊藤忠商事ではエントリーシート提出時に1分間の動画も出すことを要求していた。学生の創意工夫を見ている。売り手市場といっても、企業は学生の能力や人柄をきちんと見極めたいと考えていると思う」

「有名私大の3年生の男子学生が、ある就活人気ランキングの上位企業を受けようとしたら、18年卒の内定者から『OB訪問を1月以降に3人以上しないと、選考に進めない』とくぎを刺されたと面食らっていた。ハードルを上げることで学生の本気度を測っているんだと思う」

このように企業側は採用基準を下げているわけではありません。むしろ、上げたうえで採用の是非を判断しようとしています。これは人気企業・大手企業に限りません。さらに人不足が深刻な中小企業であっても同様です。ある企業では応募学生こそいたのですが、「どうしてもうちが求めるパフォーマンスに合わない。無理に入社させたところでお互いに不幸になるだけだし、断ってしまった」と、採用担当者がその苦渋を嘆いていました。

現在の売り手市場は数字だけで見れば学生が有利です。しかし、背景を見ていけば、バブル期のような売り手市場とは明らかに意味合いが違うことを学生は知るべきでしょう。

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
 1975年札幌市生まれ。東洋大学社会学部卒。2003年から大学ジャーナリストとして活動開始。当初は大学・教育関連の書籍・記事だけだったが、出入りしていた週刊誌編集部から「就活もやれ」と言われて、それが10年以上続くのだから人生わからない。著書に『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書)、『女子学生はなぜ就活で騙されるのか』(朝日新書)など多数。

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