大学では「やりたい・やるべき・やれる」ことを見つけよう!
ボランティアの架け橋(7)
いよいよ卒業も近づいてきました。大学生活も終わり、社会に出ていくことになります。自分にとって大学での4年間は、大きく人生を変えてくれた時間だったと思っています。たくさんの機会をいただいたり、新たな経験を多くすることで、視野や考え方も4年前の自分では想像できなかったほどのものを得ることができました。
今回は改めて"大学生活"という少しマクロな視点から振り返り、これからのことにも少し思いを馳せながら書いていきたいと思います。
組織で取り組むことの価値
1回目の記事でも少し書きましたが、高校まで水泳に打ち込んできた自分にとって、組織で成果を最大化させるという視点は当初あまり持てていませんでした。水泳は言わば個人スポーツで、泳ぐときは一人です。孤独な水の中では他者との会話すらできません。自分の成績だけをひたすら毎日の厳しい練習の中で追い求め、取り組んできた自分にとっては、ある意味それが当たり前の感覚でした。しかしそこから高校2年で身体を壊し、最後の1年を悩んだあげくマネージャーとして過ごしたことがきっかけで、チームとして動くことや他者のサポートをする自分に適性を感じていきました。
高校でも順調に成績を残していれば、ほぼ間違いなく大学でも競技を続けていたと思います。でも病気をきっかけに競技の外に別の自分の適性を見つけることができ、そこからは大学でひたすら組織の構成員として色々なことに打ち込む自分がいました。学生団体、インターン、NPOしかりです。
多くの人は大学卒業後、一般企業へ就職すると思います。僕もそうです。個人でもビジネスをしたり、食べていくこと自体は不可能ではありません。むしろこれからは個の時代ですから、会社に縛りついたり自分の人生を預けるのではなく、より主体的・自立的なキャリア意識を持つことが大切なのは間違いありません。そんな中でも会社という組織で働くことを選択する理由はなんなのでしょうか。僕は「組織で取り組むことで、個人では決して達成できない大きなことができる」ということが一つ挙げられると思っています。自分に当てはめて考えてみても、水泳のレースでいい結果を出しても、それが社会の中で大きな影響を与えることはなかなかありません(オリンピックなどの大きな大会は除いて)。
当時を振り返れば自分のために頑張っていた部分が大きく、誰かのためや、ましてや社会のためなんて考えたことはありませんでした。これは日々の社会や経済活動の中における水泳やスポーツへのアンチテーゼというわけではなく、「個人でできることには限界がある」ということです。僕が連載の中で伝えてきたことやその取り組み自体も、一人では当然できませんでした。アメリカの経営学者であるチェスター・バーナードが言っている、組織として大切な「共通の目的・協働意思・コミュニケーション」を持っていたからこそ、多くの人や地域を巻き込み、大きな影響を持った取り組みができたと思います。そのステージが「会社」となっても、気負わず社会へのインパクトを組織成果として追うことを止めず、その一員になっていきたいと思います。
「一歩踏み出す」ことが全てを変える
僕は、語弊を恐れず言えば現状維持が大好きな人間です。なぜなら楽だし、本来人間が持っている習性もどちらかと言えば既存のシステムに居座りたい傾向が強いと思うからです。だからこそ常に新しいものを追い求めたり、刺激を求めて行動し続けている人は凄いと思います。そんな現状維持バイアスをぶち壊すことこそ、全ての始まりではないかと思うんです。
1年生でこの団体に入り、半年後の主要メンバー引継ぎの時期。僕は1年生で、やっと団体や活動に馴染んできたというタイミング。そんな時に前リーダーから呼び出しを受け、「リーダーをやってみないか」と言われました。当初は「絶対やりたくない」と思っていましたし、自分には縁のないポジションだと思っていました。
でも自分以外には誰にも声がかけられていないということを知り、そして「この人すごいなー」と見ていた前リーダーから選んでもらえたならと、一週間悩んだあげく引き受けるという連絡をしました。僕にとって大きすぎる決断でしたが、振り返るとあの時勇気をもって一歩踏み出したことがその後の僕の全てでした。大きすぎる役割に少しでも見合うよう、やりきるように、自分も成長していきましたし、そしてそこから様々なことに挑戦したり、声をかけていただくことが増えました。この連載自体もそうです。
世の中にあるものは全て「誰かの一歩」で作られているのだと思います。法律さえも現代に合っていないと改正の議論がおきますし、この世に何一つ安定で形を変えないものなどないのだと思ったとき、自分も毎日を意識的にアップデートし、常に一歩を踏み出し続ける人間になりたいと思いました。
自分の軸を探し、今後の人生で向き合うことを見つける
大学という時間はなんだったのか。僕にとっては「自分が社会や世の中でやっていきたい軸を見つける時間」だったと言えると思います。医学部や理系の専門科目を学ぶ学部では例外だと思いますが、文系の大半は卒業後、学部で学んだ専門科目がそのまま活かされるようなルートには進まないと思います。しかし、だからこそ多様な選択肢と、自分に可能性があれば様々な進路が見えてくるはずです。
僕は大学入学までこれと言って将来やりたいことがなく、大学の時間でそれを見つけたいと考えていました。そして卒業間際の今、結論から言うと、「動かなければ見えてこない」ということを伝えたいと思います。人間というのは、自分のやりたいことやそのイメージは実体験からしか得られないのではないかと思っていますし、その意味ではまず色んなことに興味を持ち取り組んでいくことでしか、自分が社会に出てやりたいことは見えてこないのではないでしょうか。就活の時期になって慌てて自分の適性ややりたいことを義務感で探すのではなく、常にアンテナを張り、動き、考えていれば見えてきます。
僕は4月からは教育・人材系の会社でキャリアをスタートさせます。この団体で色んな学生を東北に連れていき、活動に打ち込んでもらう中で、学生たちがそれを自分の将来に繋がる体験としてくれたり、その後のアクションを起こしているのを見たことがきっかけでした。自分は誰かの人生やキャリアにいい影響やきっかけを与えられる人間になりたい。その軸で会社を選び、個人開発のスキルアップや転職のサポートがワンストップでできる会社に行きます。
かつて将来やりたいことがなかった自分が、ここまで明確な意識とある種の義務感、そして責任感を持って社会に出ていけるのは、やはり具体的なアクションと、そこから自分の心に跳ね返ってくる感情や思いを素直に受け止める自分がいたからです。そしてこれは何度も言うように、積極的に行動していく中からしか生まれないものです。自分が将来に向けて「やりたい・やるべき・やれる」ことをこの大学生活で見つけて欲しいと思っていますし、自分の目先のやりたいことは生きていく中で変わることがあっても、大きな軸は変わらないものがあるはずです。それが見つけられれば、社会や仕事の中で幸せな人生を送ることができるのではないでしょうか。
お互い頑張っていきましょう!!
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。