道の駅でダムツアーもサイクリングも
八ッ場に恋したダム女子たち(5)
こんにちは!跡見学園女子大学篠原ゼミのダム女子による連載も、今回を含め残すところあと2回になりました。今回は八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)とその周辺を元気にする取り組みの4つ目、「道の駅八ッ場ふるさと館プロジェクト」を紹介します。今回の記事はプロジェクトのチームリーダーを務めた窪田友香が担当します。
八ッ場ふるさと館ってどんなところ?
わたしたち道の駅チームは「道の駅八ッ場ふるさと館」を、建設中の八ッ場ダム見学の「キーステーション」にすること、さらに道の駅を長野原町の地域連携の拠点にすることを活動目標としました。プロジェクトの成功にむけ、昨年の夏には4年生1人、3年生5人、2年生4人の計10人で、現地合宿をおこないました。
道の駅八ッ場ふるさと館は名前の通り、長野原町にある道の駅です。八ッ場ダムの建設地にとても近く、ダム見学をはじめ、その他の周辺観光地なども紹介しています。
ここは雄大な山々に囲まれた絶好なロケーションで、訪れた人々にゆっくりくつろいでいただける場所です。景色だけではなく、地元でとれた特産品や新鮮な野菜を取り揃えており、それらを使った旬の美味しいお料理を絶景とともに楽しむこともできます。また近くに川原湯温泉がある温泉地なので、天然温泉の足湯があり、旅の疲れを取る癒しの時間を満喫できます。
そんな道の駅八ッ場ふるさと館で、私たちが取り組んだことを大きく3つに分けてご紹介します。
ダムツアー参加者拡大大作戦
私たちは9月の現地合宿に入る前に、数ヵ月かけて現地の事前勉強を行いました。今後の道の駅の課題として挙げたのが、道の駅をベースに実施されている八ッ場ダムの見学ツアーの参加者数を拡大することでした。いくつかある見学ツアーの中で、私たちが目を向けたのが「ぷらっとやんば」。これは道の駅に立ち寄ったお客様に、予約なし&無料で八ッ場ダムを見学していただけるツアーです。
これまでも道の駅では「ぷらっとやんば」の宣伝チラシを置いていましたが、それだけでは、道の駅を訪れたお客様に十分に伝えることはできません。そこで私たちはさらなる集客を目指し、道の駅の館内アナウンスを利用して来場者にぷらっとやんばへの参加を呼びかけたり、直接チラシを配ったりすることを考えました。
この2つを現地合宿中の9月3日に実際にやってみました。お昼前後に行った館内アナウンスはメンバーみな初めての経験。自分の声が直接、多くのお客様に届くので「失敗したらどうしよう」ととても緊張しました。ゆっくりと落ち着いて、大きな声でアナウンスすることを心掛けました。聞き取りやすいようにはっきり、滑舌よく話すことも重要で、想像以上に難しかったです。
道の駅の出入り口で行ったチラシ配りでは、直接お客様の目や表情を見ながら、ぷらっとやんばの魅力が伝わるようひとりひとりに丁寧に手渡しました。集合場所までの行き方や、ツアー開始時刻などのポイントも詳しく説明したところ、興味を示していただけました。
こうした努力が実を結び、この日のぷらっとやんばへの参加者は276人と、前日の168人から大きく増やすことができました!目に見えて効果が表れたことがとてもうれしく、やりがいも感じました。
町を周遊する新サイクリングコース
2つめの取り組みは、新しいサイクリングコースの提案です。道の駅を長野原町の観光拠点とし、農家や周辺施設などとの連携を図る良い方法がないか考えたところ、既存のレンタサイクルを活用した新サイクリングコースの提案に行き着きました。お客様がサイクリングをしてくださることで、町全体に足を運んでもらえるチャンスが広がることになるでしょう。
提案では、川原湯温泉散策コースと酒造ツーリズムコースの2本を作成しました。いずれも約4キロの道のりを50分ほどかけてゆっくり回るコースです。チームメンバーを2つに分けて、実際にレンタサイクルでそれぞれのコースを走り、気づいた点や新たにみつけた観光資源について議論しました。
レンタサイクルのPR方法の改善も提案しました。コースや料金、ガイド内容などサイクリングの全てが明記されたチラシの作成や、レンタサイクルのあることが誰にでもわかるようなプレートやのぼりの設置などです。
「何かおまけがあるとつい利用したくなる」という消費者目線での意見もあがりました。具体的には、レンタサイクル限定のオリジナル八ッ場ダムカードがもらえたり、サイクリングコースを完走したら完走証明書を贈呈し記念撮影ができるようにしたりするのはどうか、という提案です。私たちの会議に参加していただいた道の駅八ッ場ふるさと館の篠原茂社長からは、「なるほど、素晴らしい!」とお褒めの言葉をいただきました。"限定"という響きに敏感な私たち女子大生ならではの提案ができたと思います。
その他にも、川原湯温泉や八ッ場ダムなどで自転車の乗り捨てができるよう関係者と連携をとることや、道の駅にヒールやサンダルで来ている人向けにスニーカーを貸し出すなど、これまで道の駅の方々が気づかなかったことが、わたしたちが実際にレンタサイクルを体験したことで発見することができました。私たちの提案がひとつずつ実現して、レンタサイクル利用者が増えるとうれしいです。
苦労したオリジナル商品の販促POP作成
3つ目は、道の駅八ッ場ふるさと館で販売しているオリジナル商品のブランド化を図るための、商品POP(ポップ)の作成提案です。
私たちはPOPのチャレンジとして、八ッ場名物「八ッ場おつみ団子」のポスター2種類と、「浅間高原牛乳ソフトクリーム」のポスターを作成しました。作成にあたり気を付けたのは、「八ッ場ふるさと館でしか買えない」という限定感、商品の特徴やこだわった点のアピール、目を引くキャッチコピー、色使いやフォントのデザインの統一などです。
しかし、なかなか納得するPOPが作れず、とても苦労しました。夏の合宿から帰ってからもチームのメンバーが集まり、POPの作成専用ソフトを使って試行錯誤を重ねました。完成までに時間がかかってしまいましたが、11月には道の駅の商品の魅力が最も伝わる、思わず手に取って買ってしまいたくなるようなPOPを完成させることができました。実際に完成したポスターは、11月から道の駅の売り場に掲示していただいています。
以上が、道の駅八ッ場ふるさと館プロジェクトチームが取り組んだ内容です。わたしたちはこのプロジェクトで、道の駅が地域の核として機能することの重要性を学ぶことが出来ました。観光施設として多くの人が集まるからこそ、足を運んでくださった方に町のいろいろなところを楽しんでもらえるような工夫をする必要があります。そしてそれが、長野原町全体の活性化にも繋がると思います。今回の取り組みが、道の駅を拠点とした、「八ッ場ダム見学」「川原湯温泉」「浅間酒造」など周辺観光への連携のきっかけになればうれしいです。
これからも長野原町全体の発展に向けて、道の駅八ッ場ふるさと館が先陣を切って様々な取り組みをおこなうよう、私たちダム女子も全力で協力したいと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。次回はいよいよ最終回。ダム女子がこのプロジェクト全体を通して何を学んだのか、これから長野原町は八ッ場ダムをどう活用していくのかをお伝えします。ぜひお楽しみに!
(跡見学園女子大学 篠原ゼミ3年 窪田友香)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。