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リクルートスーツはいつ黒になった?(上) ~誕生からバブル期まで 基本は紺

ホンネの就活ツッコミ論(76)

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NIKKEI STYLE

「なんでリクルートスーツは黒でなきゃ、ダメなんですか?」

ときどき、学生から聞かれる質問です。実は昨日も北海道から来た女子学生に聞かれました。服装は「自分らしさを表すもの」「相手への思いやり」などとよく言います。どちらを重視するかは本人次第。では、リクルートスーツが黒になったのはどうしてでしょうか。

そこで、今回と次回の2回はリクルートスーツの歴史をたどります。今回は、リクルートスーツの誕生からバブル期までをまとめました。

1960年代までは学生服が基本

男子学生の就職率は77.5~89.4%と高いところで推移、一方の女子学生は56.7~62.8%と男子学生より低かった時代です。現代で言う総合職は男子学生が独占して当たり前でした。女子学生の就活時のファッションはほぼ話題になっていません。では男子学生は、と言えばこれも同様です。

『就職ジャーナル』1968年7月号(創刊号)には「オン・シーズンの身のこなし」と題する全3ページ、モノクロ写真中心の記事が掲載されています。登場する学生は全員男子学生、しかも全員が学生服です。今なら大学生で学生服を着るのは応援団くらい、それも球場などスポーツ大会での応援活動用であり、就活時にも学生服を着ていった例はほとんどありません。しかし、当時は応援団だろうが文系学生だろうが学生服着用が基本でした。

会社訪問時のファッション例として黒縁眼鏡、七三分け、ソフトケース、学生服、革靴の学生が登場します。人事課担当者のコメントとしては「教科書や週刊誌など、じかに持っているのはイヤな感じですね」とあります。教科書くらいならむしろ勉強熱心でいいじゃないかと思うのですが、じかに持つのが格好悪いということなのでしょうか。

他にも、がちがちに緊張した学生の写真を出してコメントは「いくらおエラい人の前でもこう縮まなくても...」。足を組む偉そうな態度の学生へのコメント「控え室で、ついボロが出る」。待合室で右奥ががちがちに緊張した学生、左手前は腕組み、足組み、くわえたばこで平然とした学生の写真では「アガルな・アナドルな」。この辺は今も昔も変わりません。

『学生島耕作 就活編』(講談社、弘兼憲史)は『島耕作』シリーズの学生編で1960年代を舞台としています。1969年に就活をした主人公(早稲田大学)は初芝電機に内定。1970年1月、早稲田大学出身の内定者を集めた懇親会のエピソードが3巻に登場します。

主人公と友人は本社勤務のために目立とうとスーツを着用していきます。これは現代の感覚からすれば当然ですが、当時は学生服が基本でした。漫画でも、出席35人中、主人公と友人以外の33人は全員が学生服。人事担当者から「組織の中では(自己アピールが)いきすぎるとスタンドプレーと見做される」と釘をさされます。

学生服から開襟シャツへ~1970年代

漫画だけでなく、『就職ジャーナル』1971年4月号でも日興証券の「集団見合い」と題したグラビアが掲載されています。当時、リクルート・ルームと呼ばれていた企業が開設した就職案内室での写真で学生8人中、スーツは1人のみ。あとは全員学生服です。

ただし、1970年代になると、学生服への疑問が出てきます。それは採用側も同様で、『週刊読売』1975年9月6日号の「特別企画・入社試験 面接、作文、知能テストのチェックポイント」では「男子学生に制服があれば、それを着用するとよいが、応援団員からの学生服を借りるのはやめた方がよい」とあります。そこで、白の開襟シャツにスラックス、あるいはスーツ、ブレザー、そして学生服が混在することになりました。

『就職ジャーナル』1972年12月号では「学生服を着る必要はないが、学生らしい服装(長髪とはおさらばし、小ざっぱりと)」と変化しています。1977年11月号では「学生服の受験者は10人に1人、就職試験のために学生服を新調するよりも、就職後にもスーツを新調するほうが、経済的である」とスーツを勧めるようになりました。

しかし、服装が混在すると当然ながら学生は「何を着ていけばいいのか」と悩むことになります。それは親も同様です。自身の経験から「学生服でいいだろう」と答えても「いまどき、学生服を着ている学生は少ない」と言われれば何がいいのかわかるわけがありません。こうした相談が大学生協にも持ち込まれるようになります。

1977年にリクルートスーツ登場

組合員(学生)に調査したところ、スーツ購入の関心が高いことがわかった大学生協は伊勢丹と提携、新宿・伊勢丹にて「リクルート」という名の就職活動用のスーツを売り出しました。「毛100%のイージーオーダーで、参考市価5万円が2万9千円」(朝日新聞1977年9月10日)とありますので、かなり格安です。その結果、1週間で1000着が売れるほど評判となり、以降、全国に広まることになりました。

広まったのは「リクルート」というキーワードも同様です。以降、「リクルート○○」が広まるようになります。たとえば、1978年の『現代用語の基礎知識』には「リクルートカット」が登場。『週刊文春』1980年9月18日号には「リクルートスタイル」「リクルートルック」も登場します。このあたりから就活時に着ていくスーツなど服装の総称として、現在定着している「リクルートスーツ」のほか、「リクルートルック」「リクルートスタイル」が混在。特に読売新聞は1990年代後半まで「リクルートルック」にこだわりました。朝日新聞など他紙は1980年代後半~1990年代半ばから「リクルートスーツ」を使用、読売新聞も2000年代前半に白旗をあげ「リクルートスーツ」に統一されました。

登場からバブル期までは紺にエンジのネクタイが基本

ところでリクルートスーツが誕生してすぐ「黒に白シャツ」が定着したかと言えばそんなことはありません。朝日新聞1978年9月6日「会社訪問にみる当世学生ファッション」によれば「紺のスーツに赤系統のネクタイ」が大半とのこと。1980年代前半の『就職ジャーナル』や1981年~1982年に旺文社が対抗雑誌として刊行していた『就職ステップ』などに入っているリクルートスーツの広告では確かに「紺に赤ネクタイ」が頻出しています。

1978年9月6日の朝日新聞記事には大学生協による4年生1000人アンケートの結果も掲載、これによると「好みの色のトップは紺色(63%)、大きく離れて灰色、茶色の順であった。しかも実際に購入する際は、8割以上が紺色に集中する。紺色は礼儀正しく落ち着いたイメージが強い」とあります。

女子のリクルートスーツは1980年代になってから

1980年代に入ると、女子学生の就職状況も向上、それにつれて服装にも注目が集まりだします。『nonno』1981年9月21日号には「新OL100人に聞きました 面接であなたが着た服は」で服装のアンケート調査を掲載しています。なお、記事には新入社員は「就職ルック」、採用担当者は「リクルートスタイル」と述べており、まだ「リクルートスーツ」が定着しているとは言えません。

アンケート結果では

1位 スーツ76票(紺35、グレー19、茶・ベージュ10、ワイン4、白・黒・ピンク・他 各1)
2位 ブレザー33票
3位 ワンピース21票

となっています。スーツは男子学生同様、紺が多数派であり、黒は当時、少数派に過ぎませんでした。

1983年には伊勢丹が女子学生向けの就活スーツを売り出します。以降、バブル期まで女子学生のリクルートスーツはスーツだけでなく、ブレザー、ワンピースなどが混在することになります。1988年刊行の『女子学生のためのリクルートファッション大研究一九八九年度版』(ビジネス・コミュニケーション・リサーチ、ぱる出版)では現在のリクルートスーツに近い、無地スーツでも「ストライプの開襟シャツを重ねて着るとシャープで都会的な印象」と紹介。他にシャネルスーツなど10着以上が登場します。

学生のビフォーアフターも巻頭と巻末にありますが、総合商社(第一希望)、堅い雰囲気の総合商社(第二希望)、百貨店(第三希望)に合わせた服装がイラスト付きで掲載されています。

第一希望:明るいベージュのツーピース、黒のボウタイ、ウエストシェイプのブラウス
第二希望:白と黒のチドリ格子ジャケット、ベージュのプリーツスカート、白レースのブラウス
第三希望:チドリ格子ジャケット(DCブランド)、ごく淡いブルーのブラウス、ハイウエストのフレア・スカート(黒)、ブルー系の柄物チーフ

なお、同書には2010年代半ばごろまで言われていた「パンツルックは就活に不利」の源流とおぼしき記述がありました。季節別のファッションを数パターン出して、採用担当者にその是非を問う章があります。大体は「別にいいです」「いいんじゃないかな」程度の中、パンツルックは酷評されています。

「遊び人だとかは思わないが、最終面接だとどうか」

「パンツスタイルは社内の女性の服装でも禁止。避けるべき」

「パンツルックはダメ」

さらに著者グループによる討論コーナーでは、Tシャツとパンツルックが禁止、制服はあっても社内の服装がほぼ自由な会社についてこんな記述もありました。

「真っ赤なワンピースを着た人などが顧客との応対に立ち回っていて、とても自由な雰囲気でしたが、それ以上の自由な気風の会社でないとパンツスタイルはダメということになりますね」

女子学生の就職ファッションが多彩である一方、男子学生は「スーツは紺、ネクタイは赤」が定着します。当然ながら「没個性」批判も登場、1984年9月13日の朝日新聞では「紺の背広にえんじのネクタイ 会社訪問の制服化」と題してリクルートスーツ批判の記事を掲載しています。

同記事によると、サントリーはスーツか学生服、日本電気はジーパン、ノータイOKとのこと。一方、学生は複雑です。「いろいろな格好をすると目立つかもしれないが、周囲の皆が着ているから仕方がない。無難だということで選んだが入社後はこんな格好はしたくない」とのコメントも出ていました。さらに別の学生は「うちの会社はネクタイなんかいらない」と聞いていた一流商社のOB訪問時に「ゴルフウエアにズボンというスポーテイな服装でOBに会った」のですが「冷たい目で見られた」。結局、別の幹部に会うときは紺のスーツを着ていったとのエピソードも掲載されています。

パンツルック不利説にリクルートスーツ没個性批判、それから「会社説明会に着ていくものが分からない」、この3つは2000年代ではなく1980年代にすでに源流がありました。ただし、黒一色というわけではなく、まだ相当カラフルだった、と言えるでしょう。というわけで後編に続きます。

石渡嶺司(いしわたり・れいじ) 1975年札幌市生まれ。東洋大学社会学部卒。2003年から大学ジャーナリストとして活動開始。当初は大学・教育関連の書籍・記事だけだったが、出入りしていた週刊誌編集部から「就活もやれ」と言われて、それが10年以上続くのだから人生わからない。著書に『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書)、『女子学生はなぜ就活で騙されるのか』(朝日新書)など多数。

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