伊藤忠商事の細井貴弘さん「ひとつのことに真剣に取り組もう」
卒業までにやっておくこと2017(5)
就職戦線を乗り切って内定(内々定)を勝ち取った就活生の皆さんに、先輩からのメッセージをお届けします。残り少ない学生生活を、どう過ごしたらよいのか。今回登場してもらうのは、伊藤忠商事の細井貴弘さん(24)です。
石炭プロジェクト、時差越え情報収集
――現在の業務内容を教えてください。
「金属カンパニー 石炭・原子燃料部 石炭プロジェクト第二課という部署に所属しています。石炭プロジェクトの生産、販売などの事業管理が中心です。プロジェクトの現地であるコロンビアや、米国アラバマ州の拠点と、こまめに情報をやりとりする必要があります。日本との時差はともに14時間。打ち合わせをする場合、日本の朝が、現地では夕刻となりちょうどよい時間帯となります。東京本社で朝7時から打ち合わせの準備をしたりしていますが、学生時代から早起きに慣れているので全く苦になりませんね」
アイスホッケーに情熱
――学生時代に力を入れたことは?
「慶応義塾大学在学中は体育会アイスホッケー部に所属し、ホッケー漬けの毎日でした。ポジションはゴールキーパーです。ホッケー選手のなかには小学生から始める人も多いのですが、わたしの場合は付属高校に入学してからでした。リンクを使用できるのは、もっぱら早朝や深夜です。高校時代は深夜に出歩くわけにもいかないので、氷上練習は朝6時から。間に合うように朝4時30分には起床していましたので、いまでも朝早い生活には強いですよ。大学に入ると、今度は氷上練習は深夜0時のスタート。午前中にウエートトレーニングなどをこなし、その合間に授業に出るという毎日です」
「キーパーというポジションを選んだのは、ひとと違うことをやりたかったから。アイスホッケーはゴールのサイズが小さいので、キーパーがしっかりしていたら失点を防げます。他の球技以上にキーパーの力量がものをいうのが魅力ですね」
――学生時代、悔しかったことや嬉しかったことを教えてください。
「大学のアイスホッケー部は1~4年生あわせて40人ほど。かなり仲がよく、家族的な雰囲気でした。大学1年の試合で忘れられない一戦があります。先輩キーパーが怪我をしたため、わたしが代わりに出場することになりました。ちょうど関東大学リーグ1、2部の入れ替えがかかった大切な試合です。結果は敗退、1部から2部に落ちてしまったのです。周囲からは『お前の責任ではないよ』と慰められたのですが、先輩たちに申し訳なく、本当につらかったですね」
「嬉しかったのは、4年の時に早稲田大学に勝ったことです。ほぼ30年ぶりの勝利でした。早大は優秀な選手を北海道など各地の強豪高校から集めていました。そんなチームに勝つのは、並大抵のことではありませんでした」
自然な流れで商社に
――現在の業種、会社を選んだきっかけは何ですか。
「大学3年の12月ごろに、就職を意識し始めました。父が商社に勤務しており、わたしが生まれたのはイタリアのミラノです。そういう環境で育ったので、もともと、海外で働くとか、外国人と働くというのはごく普通のことと感じていました。OB訪問をしているうちに、自然にプラント系のビジネスを手掛けたいと考えるようになりました。自社、パートナー企業、金融機関などとのチームワークが大切なビジネスこそが、リンクマンの精神に通じると思ったのです。総合商社を志望することにし、各社をひと通りみた結果、『一緒に働きたい』と思えるひとが多かった伊藤忠を選ぶことにしました」
――入社して、最初から石炭担当だったわけですね。
「そうです。2014年春に大学を卒業して入社。同年5月には現在の部署に配属されました。最初から石炭担当です。15年9月~16年2月の半年間、研修のためコロンビアに派遣されたことが貴重な体験でした。行った先は、コロンビアの鉱山エネルギー省といって、日本の経済産業省・資源エネルギー庁に相当する機関。最初の1カ月間はスペイン語がよく分からず、ついていくのが大変でした。コミュニケーションがとれないので、仕事にもならない日々。『お前は何をしにきたんだ?』といわれて、悔しい思いをしました。それも2~3カ月たつと、スペイン語が分かり出し、現地の文化も理解できるようになったのです。石炭マーケットの最新事情をスペイン語でまとめたり、現地の同僚に日本語を教えたりしているうちに、職場にとけ込めるようになったのです」
真剣に取り組むことの大切さ
――学生の皆さんにアドバイスをお願いします。
「学生時代にひとつのことに真剣に打ち込むことが大切です。大学の4年間で得るものは大きいと思います。わたしの場合はそれがアイスホッケーで、いまの自分のバックボーンになっています。成功へのプロセス、失敗への対応、先輩や後輩との交流......。こういったことが社会人になって生きるのです。体育会の活動でなくても、留学でもバイトでも何でもいいでしょう。とにかく真剣に取り組むことです」
――学生時代を振り返って、もっとやっておけばよかったことは?
「ホッケーに忙しく、ほとんど海外旅行ができなかったのは残念でした。語学の勉強もやっておくといいでしょう。わたしは帰国子女ではあっても、学生時代はまだまだ十分な水準ではなかったと思います。英語、スペイン語、中国語と学ぶことで、自分の視野が広がるでしょう。一方で会計の知識などは入社してからでも間に合うかなと感じています」
イチからプロジェクトを立ち上げたい
――ホッケーはもうやっていないのですか?
「実は、伊藤忠のアイスホッケー部に所属しています。週1回夜、東京本社近くのリンクで練習しています。やはりキーパーです。伊藤忠は働き方改革を進めており、午後8時以降の残業は原則禁止。仕事を終えた後、心おきなく練習に励める環境にあります。ホッケーが、仕事のよい息抜きにもなっていますね」
――将来の夢は何ですか?
「自分でプロジェクトを立ち上げたいと考えています。現在、自分が携わっているプロジェクトは大規模なものですが、すでにあった事業に途中で配属されました。イチから苦労してスタートさせる醍醐味を体験してみたいですね」
(聞き手は村山浩一)
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