LINEの川崎龍吾さん「休学してミャンマーで起業」
学生時代の過ごし方2017(3)
就職し、キャリアを積んでいる20代の先輩たちが、自らの学生時代を振り返ります。学生時代の経験は、現在の仕事にどう生きているのでしょうか。今回は、LINEでアルバイト求人情報サービス「LINEバイト」の企画を担当する川崎龍吾さん(26)です。
――いまのお仕事について教えてください。
「LINE企画室で、アルバイト求人情報サービス『LINEバイト』のディレクションをしています。LINEバイトは2015年2月から始まったサービスです。バイト探しから応募、採用まで、電話をかけたり受けたりせず、LINE上ですべて完結できるのがメリットです。サービス開始から約2年で、学生・主婦を中心に1000万人の登録数に達しました」
――ディレクションというのはどういうことをするのですか。
「簡単にいうと、LINEバイトの企画業務です。登録者のデータをもとにアイデアを出し、デザイナーやエンジニアと一緒に新たなサービスを作り上げています。求人登録では登録してもらうだけでなく、登録者にいかに仕事に応募してもらうかが重要です。『このバイトに応募してみようかな』と思わせるために、登録者の属性やこれまでのバイト経験を参考に、どんなキャンペーンを仕掛ければいいか、どういう人にどのくらいの頻度でどんなメッセージを送ればいいか、データアナリストなどとも協力して最適な方法を模索しています」
――学生時代は何をしていましたか。
「大学付属の中高一貫校だったので受験勉強をすることもなく、高校時代には文化祭やコンテストなどに積極的に関わっていました。文化祭では、1日とか2日のイベントのために、半年や1年前からコツコツあらゆる準備をして成功させることの醍醐味を知りました」
「また、『一株100円で100株の資金をもとに、4カ月間でどれだけ配当を増やせるか』というビジネスコンテストに高校のチームで参加しました。友人のアイデアで、企業に出資してもらい、フリーペーパーを発行して高校生に配ることにしました。経験のない企業回りなどすごく苦労しましたが、最終的には100円に対して1100円の配当を出すことができ、トップになりました。そのときに、『ビジネスっておもしろそうだな』と思うようになりました」
――大学ではどうでしたか。
「大学では、ビジコンを企画するインカレサークルに入りました。同じような関心を持つ学生が多く、とても刺激になりました。2年の終わりから休学してフィリピンに半年間語学留学し、帰国後は就活をして、企業の内定もとっていました」
内定を捨ててミャンマーへ
「その会社に入社するつもりで、4年生のときはITベンチャー企業でバイトをしていました。ところがそのバイト先でミャンマー人の社員と親しくなり、『ミャンマーで求人ウェブサイトと翻訳のサービスを立ち上げよう』ということになりました。それで就職はせず、13年9月に再度休学して、一緒にミャンマーに渡ったのです」
「当時は11年にミャンマーが民主化して間もない時期で、パソコンの普及率は1%、スマホの普及率も10%程度だった状況から、爆発的な変化を遂げつつある最中でした。一から会社をおこし、成長の波に乗ってビジネスを拡大することができました。サイトの運営から資金繰りまで全部自分たちでやるので、規模が大きくなると仕事も増えて、毎日自転車操業で大変でしたが、とても充実感がありました」
「その後、進出してきた日本企業にその会社を売却し、今度は日本という広いマーケットで働こうと思いました。ミャンマーからいくつかのIT企業にスカイプで面接してほしいと連絡してみたところ、全く無反応の会社も多かったのですが(笑)、LINEといくつかの会社が面接を認めてくれました。LINEは3次面接まで全部スカイプで、最終面接だけ帰国したときに受けました」
――LINEに就職を決めた理由は何ですか。
「LINEは世界で月間2億人以上、国内でも月間6800万人以上の利用者がいるサービスでありながら、スピード感をもって幅広く新しいビジネスに挑戦しているところが魅力でした。また面接で出会った社員の人たちがみんな個性的で、こういう人たちと一緒に働いてみたいと思いました」
――入社してみてどうですか。
「LINEバイトはミャンマーで手がけていたのと同じ求人ビジネスのはずなのに、規模が違いすぎてお客さんの顔が全く見えないので、最初はとまどいました。その代わり膨大なデータをできる限り深く読み込み、登録している人がいちばん欲しい求人情報を、ベストのタイミングで提供できるサービスにしようと努力しています」
あえて苦手なことに取り組む
――学生時代、何かしておけばよかったと思うことはありますか。
「大学では授業にも出ていないし、ゼミにも入っていませんでしたが、まったく後悔していません! 自分の場合は授業に出たり、1冊本を読む時間があったら、それよりはちょっとでもいろいろなことに挑戦して経験を積む方が、はるかに身になったと感じています」
「振り返ってみると、高校時代ビジコンのアイデアを出した友人に『負けた、悔しい』と思ったことが起業への関心につながりました。また、大学受験をしなかったので英語ができないことがコンプレックスでした。それでフィリピンに語学留学したのですが、おかげでアジアに目を向けることにもなりました」
「苦手なことにあえて取り組んで失敗を繰り返し、タフな経験をすることが、自分の成長の一番の原動力になりました。学生時代は、迷ったら苦手な方の道に進んで、自分を成長させる経験を重ねていってほしいと思います」
(聞き手は糸屋和恵)
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